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音楽で拡がる輪

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2021年9月

2021年9月29日 (水)

今を大切に生きていく…  『Here And Now / Erika Matsuo』

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アメリカ在住、NYCで活動しているジャズ・ヴォーカリスト、ERIKAことErika Matsuo。
彼女の6枚目のアルバムはニューヨーク在住20周年記念アルバムでしたが、パンデミックでリリースが遅れ、この夏に発売になりました。
 
ピアニストのアート・ヒラハラを連盟のプロデューサーに迎え、レコーディングに参加のミュージシャンも前作同様豪華な布陣で望みます!
 
オープナーは、スタンダード「I'm Old Fashioned」、終盤ソプラノ・サックスと絡みながらのスキャットも素敵。
色彩が一気に弾ける「Piece Of A Dream」、ローズと管楽器のおしゃれなアレンジで未来は虹色。
タイトル曲「Here And Now」、しっとりとはじまって、ラテンのリズムでテンポアップ、早口でたたみかける動きのある曲、このポジティブな感じが大好き。
「The Song Is You」、アップテンポで駆け抜け、パワフルにスキャットを決める。
伸びやかな歌声で、切々と情感豊かに歌い上げる「Home」。
 
フリューゲル・ホーンが豊かな味わいを加味する「If You Believe」、洗練されたブラジリアン音楽を聴いているよう。
カルロス・ジョビンの「Brigas Nunca Mais」、もちろん、ポルトガル語、ギターとフルートが入って踊り出しそう。ミルトン・ナシメントんp「Nothing Will Be As It Was」、熱唱!
 
冒頭ギターが寄りそう「By My Side」、ハミングが余韻を残しつつ、途中からヴァイヴが入ってクール。
ジョニ・ミッチェルの「River」、アコースティックなサウンドをバックに心を込めて歌いあげる。
ローズが響いておしゃれな「Beyond The Breeze」、エレベとエレキが風をおこす。
再び、ジョニ・ミッチェルの曲で「Both Sides Now」、冒頭ピアノとのデュオにうっとり、素敵な選曲、演奏。
終演は、ビートルズの「In My Life」、寄りそうピアノ、たんたんと歌う彼女の歌が心に沁みる。
 
「出会いと別れ」をテーマに、伸びやかな歌声で心を込めて歌い上げる。
私にもポジティヴな感情が湧き上がるアルバムでした。。今を大切に生きていかなくちゃね。
 


1. I'm Old Fashioned
2. Piece Of A Dream
3. Here And Now
4. The Song Is You
5. Home
6. If You Believe
7. Brigas Nunca Mais
8. Nothing Will Be As It Was
9. By My Side
10. River
11. Beyond The Breeze
12. Both Sides Now
13. In My Life
 

ERIKA / Erika Matsuo  (vo, compositions)
Art Hirahara (p, Rhodes, synth)
Juancho Herrera  (ac-g) #3,5,8,10
David Gilmore (ac-g, el-g) #6,7,9,11
Boris Kozlov (ac-b, 6 string el-b) exc #1,10,11
Moto Fukushima (6 string el-b) #11
Essiet Okon Essiet (ac-b) #1,10
Steve Wilson (as) #2,4
Yosvany Terry (ss) #1
Shareef Clayton (tp) #2,4
Jonathan Powell (flh) #6
Mas Koga (fl) #7
Tyler Blanton (vib) #9
Keita Ogawa (ds, perc) exc #1
Willard Dyson (ds) #1
 
 
今日のおまけは、ご本人があげていた「The Song Is You」。
 
 
 
 
 
ニューヨーク在住20周年記念アルバムリリースおめでとうございます!
 
 
 
んじゃ、退散♪

 

2021年9月25日 (土)

洗練されたアマゾネスぶり健在 『Kinds of Love / Renee Rosnes』

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『Beloved of the Sky』にひき続き、クリポタことクリス・ポッターさまが全面参加とのことで、リニー・ロスネスさまの妖しげな表情に魅せられてポチりました。
今回もスター揃いのメンバーで、ベースはクリスチャン・マクブライド、ドラムはカール・アレン、そして、ブラジリアン・パーカッションのRogério Boccatoが参加。
全曲、ロスネスのオリジナルで彼女のアレンジ。
 
オープナーは、米国のレジェンド・ピアニスト、ドナルド・ブラウンに捧げた「Silk」。
ドラムとパーカンションの二人が繰り出す原始的きな響きの中、クリポタのテナーとロスネスのピアノがアクロバティックでスリリングに走り抜ける。
タイトル曲「Kinds of Love」、しっとりと抒情的で美しいトリオ演奏ではじまり、途中からソプラノが加わって、、よりドラマチックに。
ブラジル音楽を想像させるリズム、ブラジリアン・パーカッションの音色が自然界を想像させ、フルートとテナーが彩りを添える「In Time Like Air」、フェンダー・ローズが効いたちょっと不思議な音風景。
一転、ハード・ボイルドでモーダル、対位法で始まり、対位法で終わる「The Golden Triangle 」。う〜ん、テナーの吹きっぷりに惚れ惚れ。
バロック風の洗練されたピアノ・ソロで始まる「Evermore」、その深遠なるメロディが導く異彩を放つベース・ソロ、テナー・ソロ。お見事。
短い物語を観ているような演奏が楽しい「Passing Jupiter」、ソプラノとバスクラを使い分けて場面展開を。
リズミカルな「 Life Does Not Wait (A Vida Não Espera) 」、ロスネスの優雅なグルーヴでテナーとフルートが踊る。
難解なユニゾンをきめ、ストレートに燃え上がる超絶「Swoop」。
終演は、現代社会の不安を盛り込んだ「Blessings in a Year of Exile 」、暗い雰囲気に感傷的なソプラノが効果的に響く。
 
歳を重ねて、ますます、エキゾチックで多彩な感覚、そして、洗練されたアマゾネスぶり健在。
熱い演奏なのですけど、洗練されているので、、奥深くもスッキリした味わいです!
 

1. Silk (Dedicated to Donald Brown) 
2. Kinds of Love
3. In Time Like Air 
4. The Golden Triangle 
5. Evermore 
6. Passing Jupiter 
7. Life Does Not Wait (A Vida Não Espera) 
8. Swoop 
9. Blessings in a Year of Exile 

 
Renee Rosnes  (p, fender rhodes)
Chris Potter  ( ts #1,3,4,5,7,8, ss #2,6,9, fl #3,7, bcl #6)
Christian McBride  (b)
Carl Allen  (ds)
Rogério Boccato  (per)
 
今日のおまけは、ご本人があげていた「Kinds of Love」。
 
 
ジャケットの見開きめいっぱいに、パートナーのビリー・チャイルズがライナー・ノーツを書いてます。
馴れ初め?まで、ご披露してくださって、、ご馳走さま、、いや、ありがといございます。m(_ _)m
 
素敵なピアノ・トリオが何枚か届いているんですよ!
時間を考えずに、、ゆっくりと、楽しみたいですねぇ。。
 
んじゃ、退散♪

2021年9月23日 (木)

人肌恋しい秋の夜ながに 『二重奏 III / 金澤 英明   栗林 すみれ』

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2018年の6月に、おふたりで新潟市のJAZZ Flashと、新発田市のbirdにいらしてくださいました。
その時の勢いそのまま、コロナ禍の今年の6月に録音した3枚目の二重奏がリリースされました。
以前の2枚と同様に、北海道のパームホール蘭越での録音。
 
ご本人から直接購入したので、サイン付きです♪
 
ピアニストのオリジナル5曲、ベーシストのオリジナルが1曲、團伊玖磨、チャーリー・ヘイデン、讃美歌でもある「星の世界」で、全9曲。
 
オープナーは、澄んで美しいけど優しい音色のピアノにホッとする「If Tomorrow Never Comes 」。温もりのあるメロディと演奏が、心に沁みて涙がでそうに。
重厚なベース・ソロからはじまる「花の街」、ピアノがメロディを奏でると心にふんわりとリボンがなびく。哀愁たっぷりにベースの歌心も溢れ出す。
すこし、動きのある「A Blessed Day 」、明るく躍動感のあるやりとりが続く。
譚歌にも収められていた「寂 -SABI- 」、湧き上がるようなこの切なさをどうすればいいのだろうか。
ベースのボーイングとでメロディを奏でるチャーリー・ヘイデンの「Song For Che」。ピアノが入ってベースとピアノなると、、ベースは、ピチカート、ボーイングを使い分けたふたりの力強い主張が始まる。
北海道の豊頃町のハルニエの木からインスパイアされてできた曲「Keep A Beautiful Tree In Your Heart 」。目の前に広がる美しい 光景を柔らかに表現、その威風堂々としたハルニエの存在を私たちも一緒に感じられる。
神秘的な美しさは、アルバム・ジャケットの写真になった。と、思い込んでいたら、、写真は、ニセコのさくらんぼの木なんですって!!汗
ちょっと暗黒ムード漂う「Sketch No.4 」、ピンと貼りつめた緊張感が心地よい。
ベースのピチカートでメロディが奏でられる「What A Friend We Have In Jesus」。メロディを聴けば、あぁ、、って「星の世界」。ゆったりと、遠くを見つめるように、ユニゾン、裏表になりながら仲良く、、この選曲は、、反則的だ、、心が遠のく。
終演は、前の曲の余韻を引きずるような哀愁を持つ「Giveth And Taketh Away」。
二人のゆったりした歩み、会話が続く。
 
 
自然な流れを大切にした柔らかな演奏。
饒舌過ぎず、でも、言葉足らずでもなく、、静かに心に訴えかけてくる。
ピアノの透明感のある音が、ほんわりと温かく感じる。
ベースの一音一音に込められた音も、温かく感じる。
人肌恋しい秋の夜ながにおすすめ。
 
1. If Tomorrow Never Comes 
2. 花の街 
3. A Blessed Day 
4. 寂 -SABI-  
5. Song For Che 
6. Keep A Beautiful Tree In Your Heart 
7. Sketch No.4 
8. 慈しみ深き What A Friend We Have In Jesus 
9. Giveth And Taketh Away 

栗林 すみれ (p)
金澤 英明 (b)
 
今日のおまけは、ピアニストのご本人があげていた「A Blessed Day 」。
 
 
 
 
秋のお彼岸のお中日ですね。
先日の仲秋の名月は、見事でしたねぇ。
みなさんの撮った、美しいお月様でSNSが溢れていました。
 
んじゃ、退散♪

2021年9月19日 (日)

またしてもチャンレンジャー! 『Side Eye NYC V1.1V / Pat Methhny』

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前作『Road To the Sun』は譜面を書いて、それを他のギタリストに演奏させるという、、つまり、自分は演奏をしないことを前提とした前代未聞なアルバムでした。
でも、どこを切っても「パット・メセニー」な素晴らしい楽曲、演奏でした!
メセニーさまは、バックでかき鳴らす程度での参加と、、
最後に1曲、エストニア作曲家、アルヴォ・ペルトの「 Fur Alina」を、自身で」42弦のピカソ・ギター用にアレンジし、ご本人が演奏。別世界に誘ってくれましたよね。
 
新譜は、彼の新しい試み、「SIDE EYE プロジェクト」によるアルバム。
彼がプ高く評価する新進気鋭の若手アーティストと、過去の楽曲の新曲を演奏するという試み。 
したがって、メンバーはその都度入れ替わるようなのだが、、今、彼の心を捉えて放さないのは、ピアノ、シンセ、ハモンドオルガンなどを、周りに並べ、左右の手が完全に別人格のように自在に動く、鍵盤奏者、ジェイムス・フランシーズのようだ。
そこに、とびきりのドラマーを入れる、、この路線でしばらく行くような気配。
今回は、ロイ・ヘインズの孫、マーカス・ギルモア!
二人とも、赤子の頃から、、パット・メセニーを聴いて育った世代。
彼らとともに、メセニーは新しいオリジナル曲、既存曲、アイドル、オーネットの曲を演奏
日本版では、ボーナス・トラックとして「The Bat」を収録。
 
前置きが長くなった。汗
 
オープナーは、オーケストリオンも使って、3人のサウンドとは思えぬ壮大感と、メセニーらしいメロディアスで疾走感あるギターが堪能できる「 It Starts When We Disappear」。
びっくりするのは、最後に歓声があがる、、この緻密で複雑なサウンドをライブで演奏していること!
名曲「Better Days Ahead」が、ゆったり進む。
ブルージーで、これぞオルガン・トリオみたいな「Timeline」。
ワクワク感がとまらない「Bright Size Life」、フランシーズのジャコパスのベースに負けない左手の躍動感!そして、無限に飛翔する右手。やんやですね。
8ビートがビシバシ決まったアメリカン・ロックな「Lodger」、畝りも太い。
なんとも言えないふんわりとしたやるせなさを漂わせながら、、超絶演奏が続く「Sirabhorn」。
メセニーのアイドル、オーネット・コールマンの「Turnaround」、3人の即興的掛け合いが凄い、ピアノの後ろに聴こえるカッティングにびっくり。
「Zenith Blue」、またまた、オーケストリオン登場、ギター・シンセ、、シンセ、、??なんだか、サウンドの完成度から3人で行ったライブとは思えない大きなサウンドに。
 
そして、ボーナス・トラック「The Bat」では、ギタリスト、パット・メセニーを存分に楽しめる。
 
あぁ。。興奮した。。
2019年の一月に「Side Eye」で来日したときは、ドラムはネイト・スミスだったけど、マーカス・ギルモアの柔軟さ的確さも素晴らしかったです。
で、相変わらず、フランシーズは、バケモノですわ。。メセニーさまのワクワクの源ですね。
そして、67歳の最強のギタリストは、その創造力とテクニックで圧巻させてくれます。
いくつになっても、チャンレンジャー!
 
 

1. It Starts When We Disappear
2. Better Days Ahead
3. Timeline
4. Bright Size Life
5.  Lodger
6. Sirabhorn
7. Turnaround
8. Zenith Blue
ボーナストラック
9. The Bat

Pat Metheny (g, guitar bass, orcchestrionic)
James Francies (org, p, syn)
Marcus Gilmore (ds)

 
今日のおまけは、ご本人があげていた「Timeline」。
 

 
来日ツアーは来年くらいなのだろうか。。
私は、、行けるのだろうか。。
 
んじゃ、退散♪

2021年9月18日 (土)

ジョージ・ムラーツが鬼籍に入ったそうです

チェコの生きるレジェンド・ベーシストだったジョージ・ムラーツが9月16日にチェコのプラハで亡くなったそうです。享年77歳。
プラハ音楽院にてクラシックとベースを学び、ドイツへ移住活動していた頃から、彼のテクニックは話題となっていたそうです。
バークレー音楽院に特待生として渡米した後は、その正確無比な音程と超絶テクニックですぐに売れっ子。とくに、美しいボーイングは彼の得意とするところでしたよね。

そんなわけで、多くの米国のジャズ・ミュージシャンが彼をレギュラーメンバーとして抱えたがったようです。

といくことで、沢山の参加アルバムがあります。
「えっ!あれも、ムラーツだったの」的なものから、リーダー作まで。

大怪我や、大病もあったので、77歳は、天寿だったのかもしれませんねぇ。

親日家だったせいか、、後年はヴィーナス・レコードでも沢山アルバムに参加しています。
ちょっと、悩んだのですが、1979年にリリースされたECMのこれにしました。

★ Elm / Richard Beirach George Mraz Jack DeJohnette ★

 

Elm

バイラークのリリカルで透明感あるピアノ、ディジョネットの美しいスティック裁き。
そして、耽美的な演奏から、熱く高揚感ある演奏まで、正確なピッチでボトムを支えながら、超絶難解フレーズをバンバン叩き込んでくるムラーツのベースでなければ、透徹で幻影的な雰囲気をキープできませんよねぇ。

しかし、「雪豹」、熱いですな。。


1. Sea Priestess
2. Pendulum
3. Ki
4. Snow Leopard
5. Elm

Richard Beirach (p)
George Mraz (b)
Jack DeJohnette (ds)

生の演奏を聴く機会がありませんでした。

とても、残念です。

どうぞ、安らかにお眠りください。


合掌。

 

 

んじゃ、退散♪

2021年9月15日 (水)

孤独な華 映画「Billie ビリー」@ シネウインド

映画「Billie ビリー」

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監督・脚本  ジェームズ・エルスキン

土曜日、レディ・デイことビリー・ホリデイのドキュメンタリー映画を観てきました!
不世出の才能を持ったジャズ・シンガー、ビリー・ホリディ。
わずか44年の人生は、⼈種差別、ジェンダーによる差別、さまざまな差別に立ち向かい、酒と薬と快楽に溺れ、身も心もボロボロになりながら歌い続けた孤独な華。

実体験に基く歌詞も歌も、どっぷりと感情が乗り移って、聴く者の心を揺さぶり続ける。
その代表作が、「Strange Fruit」。
ここでは、シンプルなラメ入りのニットを着て、時折、顔を歪ませながら静かに力強く歌う。
だが、この代表作によって、国家をも敵にまわすことになる。

そんな彼女に魅せられ、共感してしまった女性ジャーナリスト、リンダ・リプナック・キュールは、彼女の伝記を書きたくなり、関係者にインタビューを始める。
トニー・ベネット、カウント・ベイシー、アーティ・ショウ、チャールズ・ミンガス、カーメン・マクレエといった錚々たるアーティストから、ツアーを一緒に回ったバンド・マン。
彼女のいとこや、友人、ヒモ、ポン引き、彼女を逮捕した麻薬捜査官、刑務所職員と手当たり次第。

オフレコものの生々しい証言は、彼女の赤裸々な闇の部分を暴いていく。
そして、タウンホールを満席にし、毛皮をまとってダイヤモンドで着飾っていた女性が亡くなったとときには、全財産750ドル。
彼女に拘った人間たち、彼女から搾取し続けた証拠。

でも、彼女が20世紀最高のシンガーであることに間違いはない。

そして、インタビューを続けたリンダも、地雷を踏んでしまったようだ。
志半ばで、不可解な死を遂げる。
この映画は、リンダのインタビューをもとに、レディ・デイの映像や写真を組み合わせ、
壮絶な彼女の人生を振り返ったもの。
光と影は、一対…背中合わせであることを物語っている。

終わったあとには、重たく暗い感情が渦巻く。
そして、あの不思議な歌声が頭から離れない。

 

んじゃ、退散♪

2021年9月12日 (日)

さらなる高みを目指して 『En attendant / Marcin Wasilewski Trio』

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マルチン・ボシレフスキ・トリオが、ピアノ・トリオで新譜がでました!!

昨年、サック奏者のジョー・ロバーノが参加した『Arctic Riff』は、良くも悪くもロバーノの強い個性にも影響された、フリーからリリカルな演奏まで変幻自在の演奏でした。

今回は、ピアノ・トリオですから、シンプルにマルチンのピアノがたっぷりと堪能できます!
3人の名義のトラックが3曲、バッハの曲、カーラ・ブレイの曲、マルチンの曲、ドアーズの曲で、全7曲。

 

オープナーは、「In Motion (Part I)」と名付けられた3人名義の曲から。
マルチンの柔らかで透明感ある音で美しいフレーズを紡ぎながら、別世界に誘う。
30年以上、一緒に演奏してきた仲間との演奏は、瞬時にして場面展開も可能な息のあった演奏。アブストラクトになっても調和がとれた美しさ。

静かに、静かに進むピアノ・ソロで始まるバッハのゴルトペルク変奏曲から「Variation No.25 」、途中からドラムとベースがはいり原曲のイメージを大切に、ジャズに落とし込んでいく。

カーラ・ブレイの「Vashkar」、切れ味するどく内側へ内側へと入り込んでくるトリオの演奏。
録音が、『Arctic Riff』の少し前に行われたようで、この曲をとマルチンのオリジナルの2曲同じ曲を選曲していますね。

より自由度がまし実験的でフリー演奏度が高くなった「In Motion (Part II)」、断片的に湧き上がるメロディは澄んで美しい、そして、異国に誘う。

マルチンのオリジナルで「Glimmer of Hope」、穏やかで美しく柔らかな光を感じる。
崇高さと親しみやすさが同居する。

ドアーズのヒット曲「Riders on The Storm」、原曲の持っているアクの強さをうまく取り込んで洗練されたピアノ・トリオの演奏に。って、雷鳴もやってほしかったな。。

終演は、「 In Motion (Part III)」、即興から即興に自然と繋がり、天川の流れでも見ているよう。
最後の最後まで、触発的で決まった形のない美しい流れ。


シンプル・アコースティック・トリオと名乗っていた頃から随分と進化しましたよね。
本質は、変わらぬといいつつも、常に、より美しく、より自在に、そして、さらなる高みを目指して。

 

1. In Motion (Part I)
2. Variation No.25 from Goldberg Variations (BWV988)
3 .Vashkar
4. In Motion (Part II)
5. Glimmer of Hope
6. Riders on The Storm
7. In Motion (Part III)

Marcin Wasilewski( p)
Slawomir Kurkiewicz (b)
Michal Miskiewicz (ds)

 

今日のおまけは、ご本人があげていた「In Motion (Part I)」。

 

 

んじゃ、退散♪

2021年9月11日 (土)

傷ついた魂の再生 映画「ドライブ・マイ・カー」@ 新潟西イオンシネマ

映画「ドライブ・マイ・カー」

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監督 濱口 竜介

原作 村上 春樹

脚本 大江 崇允

出演 西島 秀俊 ・ 三浦 透子
   霧島 れいか・ 岡田 将生

すっごく面白かった、あの短編集から、、こんな映画ができるなんて、濱口監督すごい!
早く観たかったのだけど、西のイオンシネマでしか上映してなくて(約20キロ弱)、海沿いの一本道をドライブしてきました。

村上 春樹の短編集「女のいない男たち」から、「ドライブ・マイ・カー」を中心に、いくつかのエピソードを織り込んで、オリジナルの物語も巧みに加えて、傷ついた二つの魂の再生を描いていく物語。

原作の「女のいない男たち」は、深く愛した女性に去られた男性の深淵な心の闇を綴った短編集。
失うことが怖くて、真実を見据えることができず、その闇が深く果てがなくなった男性たちの話。
内に抱えたブラック・ホールに、呑み込まれそうになる話、呑み込まれた話。。

主役の職業が俳優という設定なので、多言語演劇で「ゴドーを待ちながら」、「ワーニャの伯父さん」が、劇中劇として入ってくる設定もかなり巧いと思う。
特に、「ワーニャの伯父さん」は、オーディションから本番までの行程で、出演者の性格が剥き出しになっていくのがスリリングだった。


各自、闇の奥に葬りさった自分が見たくない自分の本心が、少しずつ少しずつ浮上してあからさまになっていき、一気に隠されていた感情が溢れ出る場面。
彼らの一言ひとことが、胸の奥にささる。

家福の坦々とした静かな演技が、心の傷の深さをより際立たせた。
高槻のストレートで激情的で破滅的な生き方も、心の傷をえぐるようだった。
渡利は、現代社会の親子の問題にも深く繋がっていて、理屈ではわからぬ親子の関係の難しさを抱えていた。
家福音が、どれだぇダークマターを心の中に溜め込んでいたのだろうか。

職業でなくても、人は何かしらの演技をしているのではないのだろうか?
なんの演技もせずに、日常をすごせる人は、、きっと、僅かだろう。
でも、演技と真実の境目が崩れてしまい本当の自分を見据えることができなくなったら、、きっとお仕舞いなんだね。
すごく、怖いお話。。

で、なにより、サーブ900が可愛かったですね♪ 笑

原作を知らずとも、楽しめます。
でも、原作を読んでいると、思わず唸ってしまいますよ。
よくぞ、ここまで練り込んだなぁ、、って。

んじゃ、退散♪

2021年9月 8日 (水)

ノルウェーのマティアス・アイクが新譜を出す!

ノルウェーのベテラン、トランペッターのマティアス・アイクが前作『Ravensburg』以来、3年ぶりのアルバムをECMからリリースします♪

★ When We Leave / Mathias Eick ★

 

When_we_leave

スカンジナビア半島の哀愁を漂わせた前作のメンバーに、スティアン・カシュテンセンのペダル・スチール・ギターが加わった新譜。
きっと、今まで以上に神秘的なしあがりになっているのでは?

 

1. Loving
2. Caring
3. Turning
4. Flying
5. Arvo
6. Playing
7. Begging

Mathias Eick (tp, key, voice)
Hakon Aase (vln, perc)
Andreas Ulvo (p)
Audun Erlien (b)
Torstein Lofthus (ds)
Helge Andreas Norbakken (ds, perc)
Stian Carstensen (pedal steel guitar)

ご本人があげていた「Caring 」。






これも、秋にぴったりくる1枚となりそうですね。

んじゃ、退散♪

2021年9月 5日 (日)

音楽の宝石箱! 『Becca Stevens & The Secret Trio』

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唯一無二の感性を持つ、シンガー・ソングライター、ギタリスト、ベッカ・スティーヴンス。
前回のイーラン・メーラーとのデュオ作『Pallet On Your Floor』で、歌唱力の高さを改めて知らしむことになり、ヴォーカル・ファンを唸らせちゃったわけだが、、
新譜は、アルメニア人のウード奏者のアラ・ディンクジアン、マケドニア人のクラリネット奏者のイスマイル・ルマノフスキ、トルコ人のカーヌーン奏者タマル・ピナルバシによるトリオ、シークレット・トリオとの共演。
う〜〜んと、ここで退いたら、もったいないっ。
試聴したら、伝統楽器を現代感覚でも弾きこなせる彼らとのコラボは想像以上に素敵だった。
 
オープン曲と2曲目は、アルメニアの中世の詩人、ハペット・クチャクの詩にスティーブンスとマイケル・リーグが曲をつけたもの。
中世の街中を彷徨う女性が浮かび上がる抒情的なメロディ、演奏、彼女の歌声が白昼夢のよう「Flow in My Tears」、私は、この1曲でメロメロです。。
一転、リズミカルなコーラスがハマっている「Bring It Back」。
しっとりと異空間に誘う「We Were Wrong」、微細に変化してどこか艶めかしい歌声。
米国のSSWポール・クレリの「California」、2009年の米国の曲とシークレット・トリオの演奏がぴったりくるアレンジで切なくなる。
ルマノフスキの曲でクラリネットが民族楽器のように響き奥行きがある「Eleven Roses 」、多重録音でブルガリアン・ヴォイスのようなコーラスが印象的
儚げな歌声とともにカーヌーンの超絶ぶりが聴けるピナルバシの曲「Lucian」。
リルケの詩にスティーブンスの曲を合わせた「Pathways」、まさに夢の中。
さまざまなことにインスパイアーされ彼女の頭の中に浮かびあった女性「Maria」、吟遊詩人からマリアの物語を聴くよう。
高音のヴォイスが薄くベールされたようなディンクジアンの曲「Lullaby for The Sun 」。
抽象的で哲学的な内容に惹かれたというマケドニアの現代の詩人ニコラ・マジノフの「The Eye 」、繊細でいて力強い。
終演は、ジェーン・タイソン・クレメント(Jane Tyson Clement)の詩を使った「For You The Night Is Still」、切ない気持ちが中東音楽の微分音と結びついて深く悲しい。
アタッカ・カルテットのチェロ奏者、ネイサン・シュラムがバック・ヴォーカルで参加している。彼は、スティーヴンスのパートナー、どうやら次作はアタッカ・カルテットとのコラボらしい。
 
やっぱり、ヴォーカル表現が多彩で豊かだなぁ、、そして、音楽のセンスが素晴らしいすぎるなぁ。。。と。
もともと彼女の中にあるフォーキーな感覚が、シークレット・トリオの中近東の微分音とぴったりハマった感じ。
 
彼女の高い音楽的好奇心から生まれた美しい音楽が詰まった宝石箱。
どの曲も柔らかな光を放っている!
 
 
1. Flow in My Tears
2. Bring It Back
3. We Were Wrong
4. California
5. Eleven Roses 
6. Lucian 
7. Pathways 
8. Maria 
9. Lullaby for The Sun 
10. The Eye 
11. For You The Night Is Still

Becca Stevens (vo, ukulele, Charango, ac-g)
The Secret Trio 
 Ara Dinkjian (oud)
 Tamer Pina Pınarbaşı (kanun)
 Ismail Lumanowski (cl)
Michael League (moog bass, Back ground vocals, ac-g)
Nathan Schram (Back ground vocals)  #11

 
今日のおまけは、レーベルがあげていた「California」のライブ・ヴァージョン。
 
 
んじゃ、退散♪
 



2021年9月 4日 (土)

幅広い才能 『Open Sky / Art Hirahara』

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NYCで活躍する日系のピアニスト、コンポーザー、アート・ヒラハラ。
私的には、同じNYCで活動しているヴォーカリスト、Erikaのアルバムで、ピアニストで、音楽的な監督のような立場でお馴染みでっす。
でも、リーダー作を買うのは初めて。熱いブロウで私の周りで人気のサックス奏者、ニコール・グローバーが3曲に参加しているのもポイントが高いですね。
ヴィブラフォン奏者のベーン・ギレスも1曲参加している。
ヒラハラのオリジナルが9曲、メンバーのオリジナル2曲、スタンダード、デューク・ピアソンの曲で、全13曲。
 
オープナーは、力強いタッチのピアノで始まる「Groundswell」、ルディ・ロイストンの押しの強いドラムが炸裂。
粋でスィンギーな「Inimitably, Mr. B. 」、ボリス・コズロフのウォーキング・ベースが、賑やかな街中を闊歩するよう。
ピアノ・ソロで、優しく優雅に「Peony」。
タイトル曲「Open Sky」には、ベーン・ギレスのヴィブラフォンが加わり、澄んだ広々した青空のような透明感ある一体感のある演奏が続く。
グローバーのゆったりしたテナーで始まる「Mia Bella」、次第にヒートアップし感情が高まるとテナーの早いフレージングも聴ける。
コズロフの曲「Nao Tao Azul」、ベースとのユニゾンも入って、メリハリあるリズミカルな演奏。
硬質で透明感のある甘さ抑え目なピアノ・ソロ「Cittadella」。
アグレッシブなテナーが入って疾走感ある「Together, Apart」、3人に煽られてゴリゴリと吹きまくるグローバーさま♪ 
とても、可愛らしいメロディが印象的なロイストン曲「Sunday Morning 」。
ソプラノ・サックスが踊るラテン調の「Weathered The Storm」、軽やかに。
ピアノ・ソロで、スタンダード「I'm Getting Sentimental Over You 」を華やかで流麗に。
デューク・ピアソンの「Empathy」、ビターでインテリジェンスを感じさせる緊張感ある三位一体の演奏。
終演は、静かな夜のロマンスを感じるバラッド「Nightfall 」。最後まで甘さに流されない美しい演奏。
 
ロマンチックなメロディなども、甘さに流されることなく一貫性を感じる。
でも、さまざまま場面が広がる幅広い演奏。
NYCで、ストレートアヘッドなジャズ・ライブを聴いているような一枚。
って、、行ったことないのだけど。。汗
 
 
 
1. Groundswell 
2. Inimitably, Mr. B. 
3. Peony 
4. Open Sky 
5. Mia Bella 
6. Nao Tao Azul 
7. Cittadella 
8. Together, Apart 
9. Sunday Morning 
10. Weathered The Storm
11. I'm Getting Sentimental Over You 
12. Empathy 
13. Nightfall 
 
Art Hirahara (p)
Boris Kozlov (b) exc. #3, 7, 11
Rudy Royston (ds, per) exc. #3, 7, 11
Nicole Glover ( ts #5, 8  ss #10)
Behn Gillece (vib)  #4
 
今日のおまけは、ご本人があげていたタイトル曲「Open Sky」。
 
 
んじゃ、退散♪

2021年9月 2日 (木)

おうち時間が充実する♪ 「クワイエット・コーナー2 日常に寄り添う音楽集 / 山本 勇樹 (著)」

北書店にお願いしていた「Quiet Corner 2 / 山本 勇  (著)」がやってきました!

 

Quiet_corner_2


 
山本 勇樹氏が監修していた「クワイエット・コーナー」の第二弾がでました。
2014年にでた第一弾には、「心を静める音楽集」 と、サブ・タイトルがついていましたが、
今回は、「日常に寄り添う音楽集」と、なっています♪
出版元の解説にあった冒頭一文が良いですね!
 
「心の情景を優しく描く、素晴らしき音楽との出会い。」 
 
「センシティヴ」で「インティメイト」を通奏低音に、12のテーマで多様なジャンルの作品を約400枚セレクトとのこと。
それぞれに、冒頭、フィーチャリングされたアーティストが挙げられており、親みやすい。
知っている、持っているアルバムはもちろん、知らないアーティストはサブスクで確認しちゃったり、そのまま、部屋で流したり、、。
 
他にも、様々な背景の方々の音楽にまつわるエッセイが載っていたり。。
これは、もう、、おうち時間の充実に貢献すること、間違いなし。
 
12のテーマと冒頭のアーティストを載せておきますね。
 
1. Ma Fleur feat. Luiza Brina
2. Windfall Light feat. Emma Frank
3. Still Life feat. Masayoshi Fujita
4. Color de Verano feat. Daniele de Bonaventura
5. So Long, Frank Lloyd Wright feat. Goro Ito Ensemble
6. Polka Dots and Moonbeams feat. Slawek Jaskulke
7. Small Folky Talk feat. Bedouine
8. Born to Be Blue feat. Bruno Major
9. Always By Your Side feat. Ralph Towner
10. The Chill Air feat. Thomas Bartlett
11. Crystal Silence feat. Scott Orr
12. Little Peace Piece feat. Diana Panton
 
いわゆる、ジャズ系のアーティストの作品は、、結構、持っているのですが、
ちょっと、びっくりしたのは、「Color de Verano」のところに、
映画「Call Me By Your Name」のサントラが載っていたこと。
スフィアン・スティーヴンスの歌は、映画にぴったりハマっていてサントラをポチったのでしたね。
懐かしくなって、彼の3曲をリピってしまいました。
「Mystery of Love」、「Visions of Gideon」のメロディが流れると映画の場面がたちあがります

 
 
また、知らない扉を開けて、勇者のように広く深い音楽世界に旅立つ。
この秋…ゆっくり、読んで楽しみたいな。。
んじゃ、退散♪

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