即興に拘る 『Ruby / Makoto Nakamura Trio (中村 真トリオ)』
先日、ライブにでかけた中村真トリオの新譜、中村 トリオの名義で4枚目のアルバム。
ベーシストは、4枚とも中村 新太郎。中村 真が、「彼は自身の美意識に忠実に、いつでも、新鮮に音楽を演奏する」と、尊敬しているベーシスト。
ドラマーは、前作『Makoto Nakamura Trio』よりトリオに加入した、大村亘。以前は、トリオのアルバムのドラマーは、全部違うドラマーで行おう、と、考えていたらしいのだが、今回は続投。トリオのサウンドの印象は、ドラマーでがらりと変わり新しいサウンドをアピールし易い。でも、それよりも、より進化したトリオのサウンドの凄みと面白さをとったのでは?と、思わせるドラマー。
スタンダードが6曲と「Extemporization」と名付けられた完全即興が2曲のスタジオ録音盤。
オープナーは、ピアノの訥々とした音から始まる「Extemporization Ⅰ」。不穏な心模様を互いに探り合うような五感と語感勝負の演奏が続く。超自然に流れて行き、混沌とすることなく、クリアな意思が伝わってくる感じ。最後のピアノ響が終わるタイミングで始まる「Moment's Notice」、高速で前衛的な切れ味の良い「これが即興だ」的な三位一体の演奏に痺れる。時折聴こえてくる聴きなれたメロディの新鮮なこと。
一転、音数少なく始まる「Up Jumped Spring」。バラッドの優しいメロディを美しく。硬質でクリアなタッチが奏でるフレーズの中に、ベースのフレーズとドラムのフレーズがピタリと納まる。
最初のワンフレーズで「Blue in Green」とわかるのだが、その後が泣ける。全体を支配する孤独感が凄い。耽美的というのではないけど、 メロディの向こう奥深くに浮かぶ光景を、映し出してるような綺麗な音選び。エモーショナルで緊張感高い演奏。
なんだか、モンクの音選びのような自由な「I'll remember April」。ピアノとベースが距離感がある感じなのにぴったりとくっ付いてくるドラム。不思議感満載。そして、各演奏者のソロがピースの一片のようにハマってしまう。気がつけば濃い空間。
2曲めの完全即興「Extemporization Ⅱ」。即興の醍醐味、瞬間瞬間のそれぞれの音選び。瞬発力はもちろん、自分の思うところが音となってぶつかり合う瞬間が炸裂。意識の下に潜り込む感じも面白い。3人とも音の超能力者。
ボーイングが効果的な「What Kind of Fool Am I」。深く心に染み込んでくる。
終演は、しみじみと回顧したくなるような「I Thought About You」。ピアノが選ぶ音は、「I Thought About You」のメロディに乗せた心象風景かな。駄目押しするような歌心満載のベースのソロ。デュオかと思うくらいの静寂なドラムの音の選択。私は、、流れ出てしまった自分の想い出をとめることはできませんでした…。
前作より、より綿密なインタープレイを堪能できる。
中村 真トリオの今を思いっきり感じることができる。
3人が、即興であることに拘ったその精神がお見事。
1.Extemporization Ⅰ
2.Moment's Notice
3.Up Jumped Spring
4.Blue in Green
5.I'll remember April
6.Extemporization Ⅱ
7.What Kind of Fool Am I
8. I Thought About You
中村 真 (p)
中村 新太郎 (b)
大村 亘 (ds)
ちょうど良いおまけが見つけられませんでした。
残念。。
んじゃ、退散♪
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