Black Orpheus / Masabumi Kikuch (菊地雅章)
2015年の夏に亡くなった孤高のピアニスト菊地雅章。生前最後となった2012年の東京でのライブ盤。
東京文化会館小ホールでのPA無しの即興演奏は、アイヒヤーの手に渡りECMの空気に揉まれ私たちのもとに届きました。「黒いオルフェ」と「Little Abi」以外は即興。
始まるという言葉の持つアクセントも感じぬほど空気の中から湧いてきたような音の続く「Tokyo Part I」は次第に強い意志のもった音となっていく。
甘さもなく内省的で心の想いをつづる作業が続く。連打や沢山の音からくる緊張感ある時間も、音数少なく恐れ入るような消え入るような時間も、、全てが彼の内なる世界、内なる世界とつながる見知らぬ世界である。メロディではないけど、選び抜かれた美しい音の羅列が時を忘れさせる。
ふと気がつくとゆったりと「黒いオルフェ」のメロディが流れ、、かろうじて現実の世界に繋がってる気持ちになる。泣けるほど美しく優しい深い音が心に刺さる。
終わりも見えない訥々した独り言が心に響く。拍手の音が心もとないのが、、なんだか心地良い。気がつけば終演。終演曲は娘に捧げた「Little Abi」。穏やかで淡い淡い光を放ちつつ遠くにいってしまった…。
全編が菊地雅章が言うところの「浮遊するサウンドとハーモニー」での即興演奏。
フリー・インプロヴィゼーションが中心というと強面なイメージが先行してしまうと思うのですが、内省的で美しい音の世界です。身も心もキリリと引き締まる1枚。
1. Tokyo Part I
2. Tokyo Part II
3. Tokyo Part III
4. Tokyo Part IV
5. Tokyo Part V
6. Black Orpheus (Manha de Carnaval)
7. Tokyo Part VI
8. Tokyo Part VII
9. Tokyo Part VIII
10. Tokyo Part IX
11. Little Abi
菊地 雅章 Masabumi Kikuch (p)
まさにその日の1曲なのですが、、音質のせい?で随分印象が違う感じ。
貼り付けていいのか、、ちょっと迷いました。
最初のリリーズ日が4月15日だったので、同じリリース日のCDと組み合わせたら、、
随分と早まったリリースとなって、だいぶ手にするのが遅くなりました。
んじゃ、退散♪
« Tres Trick / Akiko Toyama Trio(外山 安樹子トリオ) | トップページ | Egberto Gismonti @ 練馬文化センター (4/20) »
「JAZZ」カテゴリの記事
- 穏やかなれど高揚感あり 『Silent World / Wolfgang Haffner』(2023.03.15)
- ギター界の2刀流、ドミニク・ミラーがECMから新譜を出す!(2023.03.12)
- 『ジャズ批評 232号』がでました〜♪(2023.03.01)
- 登場人物の気持ちが音楽になった 『BLUE GIANT オリジナル・サウンドトラック / 上原ひろみ』(2023.02.22)
- 同じ時代に生きていることを感謝! 「Brad Mehldau in JAPAN 2023 @ 紀尾井ホール(2/4)」(2023.02.08)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: Black Orpheus / Masabumi Kikuch (菊地雅章):
» Black Orpheus/Masabumi Kikuchi [ジャズCDの個人ページBlog]
ECMレーベルの新譜が5枚届いているので、聴いていきたいと思います。今回の目玉は [続きを読む]
» ECMからリリースされた菊地雅章のソロ・ライブが素晴らしい。 [中年音楽狂日記:Toshiya's Music Bar]
Black Orpheus 菊地雅章(ECM) まず記事の訂正から。私はこの記事をアップした時に,このアルバムのライナーにクレジット表記がないように書いてしまいましたが,私が見逃していただけでした(酔... [続きを読む]
« Tres Trick / Akiko Toyama Trio(外山 安樹子トリオ) | トップページ | Egberto Gismonti @ 練馬文化センター (4/20) »
いつもの菊地さんより音数は多いし、現代音楽的だけど、ECMのミキシング(マスター?)の力で、よりECMらしいコンサートに仕上がりました。これも素晴らしい演奏なので、これで最後になってしまったのは残念です。でもいい演奏を残してくれました。
TBさせていただきます。
投稿: 910 | 2016年4月21日 (木) 08時13分
910さま、お返事おそくなりました。m(_ _)m
遺作ということを抜きにして、とても素晴らしい演奏だとおもいました。
YouTubeの演奏を貼り付けるのに、ちょっと悩んだのですが、演奏そのものもとても良いと思い貼り付けました。でも、最初にCDを聴いちゃったので違う世界のように感じました。
ご冥福をお祈りいたします。
投稿: Suzuck | 2016年4月22日 (金) 11時29分
Suzuckさん,こんばんは。
このソロはYouTubeとCDでこれほど印象が違うのかと思う人は多いだろうと思いますが,CDはManfred Eicherが彼の感覚で菊地雅章の音楽を再構築したって感じがします。
これははっきり言って感動的な作品だったと思いますが,リアルな世界との違いが大きすぎると感じる人がいても不思議はないでしょう。
それでも感動作は感動作。私の中では今年のベスト作候補に確実に残る作品だと思っています。
ということでTBさせて頂きます。
投稿: 中年音楽狂 | 2016年4月22日 (金) 23時42分
閣下、お返事が遅くてすみません。m(_ _)m
菊地雅章氏のことを特別詳しいわけではないのですが、
1聴に心を鷲掴みにされました。
ご本人の当時の心境のようなシリアスなものが満ちているのですが、
美しさと力強さを秘めた作品だとおもいました。
トラバも遅くなりましたが、今いたしました。
投稿: Suzuck | 2016年4月26日 (火) 13時34分
皆さん話題にしていますが、私は残響過多だと思いました。他のアルバムでの、日本のスタッフのほうが菊地さんの理解者だと思いました。
それはともかく、素晴らしいアルバムで、ゆっくりと高みに昇るような、ピアニスト人生だったのだなあ、と思います。なかなか手に入らないアルバムも多いのですが、是非とも、いろいろ聴いてみてください。素晴らしいです。
投稿: ken | 2016年6月 2日 (木) 21時11分
kenさま、仰ることは理解してるつもりです。
私は、いつも「ミュージシャンの想いをくんだ録音」が良い録音だとおもってます。
今、出ている音と違う世界の音でもミュージシャンの想いに近い感じで聴けるのはそれはそれで良いのではないかな。。って、おもいました。
この日の菊池さまは、少しあちらの世界を意識した演奏なのではないかな。。って、思うので、この残響もいいかな、っておもいます。うまく言えないですみまんせんが。
仰るように、他のアルバムにも挑戦してみますね。
投稿: Suzuck | 2016年6月 3日 (金) 12時42分