Melange Bleu / Lars Danielsson

7月の終わりに「VENTO AZUL RECORDSさん」>のところで教えてもらい、入荷してすぐに送ってもらいました。
去りゆく夏、深まる秋、、そして、、訪れてしまった冬と、、三つのシーズンを一緒に過ごしてきました。聴くたびにその不思議で深遠な世界にはまっていっています。
エレクトリックなサウンドがかぶさりますが、その芯にはダニエルソンのリリカルでセンチメンタルでメランコリックなメロディがあり、それを中心にクールな音楽風景が広がっています。
第一印象は、「近未来風、環境音楽みたい」、、かな?
そして、前作「Libera me」の最後の演奏はここにつながっていたのね、、といものだった。
「Libera me」は、クラシックとジャズとの融合みたいなサウンドで、でも芯には自分自身があってオーケストラをつかって赤裸々なまでに感情表現を押し出してきたアルバムでした。オーヴァーダブなどありましたが、基本的には楽器そのもの音をつかったものでしたが、なぜか最後の曲はサンプリングなどかぶさった、他の曲とは違う雰囲気だったのです。
今回はループマシンなどエレクトリニクスの機器を積極的に使ってゲストのクリエイティヴ&イマジネイティヴな演奏も取り入れ自己表現を試みた意欲作です。
あ、オーケストラも曲によってかぶってます。
前回同様、ダニエルソンの一貫した世界観を、きっちりと作り込まれた部分と、即興的な部分がうまく調和した構成で作り上げてある作品。
そして、やはり前回同様、、聴く回数が増えるにつれ、アルバムにどっぷりはまりこむのです。やっぱ、深いわ。
この二枚は、表現方法やサウンド的には全く違っているけど、コアな部分では通じてる。その中心は彼自身。リーダー作なのだから、当然なのですが、結構我を見失ってる作品は多いきがします。
彼自身の内なる世界と、外の世界との交わる部分でのストイックな音楽観の追求。
センチメンタルで、メランコリックで、、そして、ノスタルジックな旋律。
彼の心の奥で流れてるメロディはいつも切なく、美しい。時には憂鬱な影をも持つ。
機械的なサウンドを多様しながらも、軽薄さを感じないアルバムなのは、しっかりしたダニエルソンの世界が投影されてるからではないでしょうか?
機械的に作り出したサウンドと生身の音楽とが不思議にまじりあったサウンドは、BGM風に聴いてしまうと、漂う霞のようにあまり身体に入って来ない。
ところが、向かいあうと、その霧と一緒に漂うように一気に不思議な異次元の世界にトリップできる。不思議な空間を旅する自分。
大きさの見えない空間を、、空間、次元、時間、、を自由自在に移ろっていく感じ。。
時に、分子のレベルに分解されて、、漂っていく、、
そんな、不思議な気分にさせる世界。
エレクトリックなマシーンをつかった単調なリズムからうまれる「トランス状態」それは心地よいBGMであり、みずからの鼓動であり、、地球のリズムであり、
見えないはずの時間が見え、心と体の自由を感じる。
全てがオリジナル曲。2曲がBugge Wesseltoftとの共作になっていますが、他はすべてダニエルソンの曲。
冒頭タイトル曲は、荒涼とした大地、、光りのない世界をまるで迷子になった子供がさまようような寂しいメロディをダニエルソンのピアノが訥々とつづる。。
この心の奥にからしみ出てくるような切ないメロディに引き込まれていく。。
素朴と言うにはあまりに、鬱な心のメロディに、、深く底のない闇の世界につれこまれてします。生きてる事はこんな悲しさ暗さも含んだものなのです。
つづくMakroはNils Petter Molvaerが登場。プログラミングされた「心臓の鼓動」のようなビートの中タイトル曲と同じ嗜好のメロディをクールに吹き上げる。漂う灰色の霧の中をさまよう不思議な感覚。もしかしたら、人が生まれる前、母の体内的宇宙の中で聴いていたサウンドってこんな感じかもしれない。
Bugge Wesseltoftとの共作の一曲目、さすがにピアノはブッゲが担当。人間が登場するずっと以前からある静かな朝の風景を見るようです。穏やかなメロディ。。
Ironsideは、再び、風景が動きはじめる。静かに始まった曲は次第に気持ちが集合収束するような感じで、高ぶって行く。打ち込みの単調なリズムに潜在意識の中の何が共振し、かぶさるように入るヴォイスにちょっとトランス状態。一度きいたら忘れられないメロディがつづく、、、
Judas Boleroは、心の空洞にチェロが響く。ダニエルソンとペッターモーヴェルの鬱状態デュオではじまり、陰影の強い混沌とした集団即興的な演奏が続くが、音楽的にはかなり計算されている均整のとれた美しさをもった曲。
ブッゲが感情を抑えてたんたんとピアノ弾くMinor Peopleは、暗く何かを訴えかけるような不思議なメロディ。どこまでも美しく切なくひんやりした演奏。
明るい感じで、ちょっと躍動感のあるSketches Of Twelve。タイミングよくかぶさるチアルコが効果絶大。ベースのピチカートが心地よいNaive。リリカルでロマンティックなメロディ&演奏。心ときめくベースソロが入り乙女心を揺さぶる一曲。と、いきなりファンクテイストたっぷりに、一転してエレベの蠢く世界Bacchanalia。
ラストナンバーAfter Zero。ゆったりとした大好きな曲、演奏。チェロのアルコ、ベースのピチカート、ピアノ、サンプリング等も含め、オーヴァーダヴによる独り?演奏だとおもうのですが。。。
短い曲ですが、幽玄な世界が広がっていて、それはダニエルソンの心の奥に広がる雄大な風景なのかもしれない。北欧の厳しく美しい風景、風土、、人々に長く伝えられてきた美しいメロディ、、それらによって織りなされた、心の奥底に広がる原風景を垣間見るような気がします。
彼の音楽風景を締めくくるのに大変ぴったりな曲でした。
プロローグ、エピローグのある壮大なファンタジーのような作品。
あなたも、不思議の国の旅人になりません?
人は誰もが心の奥に孤独の影を持つ。
この孤独な影と向かい合うのが芸術家の宿命。
そして、その孤独と対峙できる人は創造の神に祝福される。
このアルバムから、そんな言葉が浮かんでくるのは私だけなのでしょうか?
1. Melange Bleu
2. Makro
3. Les Coulisses
4. Ironside
5. Judas Bolero
6. Minor People
7. Sketches Of Twelve
8. Naive
9. Bacchanalia
10. After Zero
Lars Danielsson - cello, acoustic bass, Fender bass, piano, Fender Rhodes
Bugge Wesseltoft - piano
Nils Petter Molvaer - trumpet
Eivind Aarset - guitar
Jon Christensen - drums, percussion
Anders Engen - drums
Jan Bang - samples, livesampling
Pal "Strangefruit" Nyhus - vinyl channeling
Vytas & Mario Basanov - beats & samples
Caecilie Norby - voices
Gustaf Ljunggren - steel guitar, syntheziser
Xavier Desandre Navarre - percussion
Copenhagen Concert Orchestra
「壮大なファンタジーのような作品。」
と、、書きましたが、ファンタジー読まない人にはお子ちゃまむけ夢物語、
って安易なイメージになってしまうかもしれませんね。
イメージ的には「ハリーポッター」や「指輪物語」ではなくて、
自己との葛藤、のようなどちらかというと人の心の影の部分、内面的な事をテーマにしてる「ゲド戦記」が近いかもしれませんね。。。と、ますます混乱。か。。
人は誰もが心の奥に孤独の影を持つ。。。私的キーワードはこれよ。
そしてね、不思議な音楽世界を旅した気分になります。
それはね、レイブラッドベリの作品を読んだときのように、、
自分は行ったこともない場所に郷愁を覚えるような。。
現実の世界と、虚構の世界とが交錯しちゃう。。
不思議なトリップ感ね。。。
最近のコメント